2018年3月22日木曜日

横断歩道の直近の違法駐停車を誘発するデザイン、抑制するデザイン

赤坂消防署入口交差点から青山霊園方面に少し入った場所(出典URL

前々から思っていましたが、駐停車を牽制する目的で東京都が用いている赤い舗装(法的効力はない)は、それが途切れる停止線から先(横断歩道の直近)の違法駐停車を却って招いているのではないでしょうか?

動物としてのドライバーの習性を考えれば、このデザインはもう少し考えようがあると思います。



私は一般的なドライバーの資質・行動原理を次のように捉えています:
  • 自分の目的地に可能な限り近い位置に駐停車しようとする
  • 横断歩道の直前・直後での駐停車がなぜ禁じられているかを理解していない
  • 駐停車が禁じられている場所がどこかを忘れている
  • 自分の行動が他の車に迷惑を掛けるかどうかに敏感
  • 他の車に迷惑を掛けないことを歩行者の安全より優先する

これらの習性を逆手に取って道路をデザインしなおせば、違法な駐停車を躊躇わせる効果が期待できると私は考えています。


一番手っ取り早く試せるのは、写真の位置にボラードを立てること

  • 駐停車が歩行者にとって危険・迷惑になる状況
  • 駐停車が他の車にとって邪魔になる状況
を重ね合わせるという発想です。弱者である歩行者の安全を思いやれないドライバーでも、強者である他のドライバーの敵意が自分に向くことを恐れ、駐停車を躊躇うはずです。

上下線を構造的に分離すれば良いという考え方はオランダの無信号横断歩道のデザインにヒントを得ています:

上下線が分離され、車道の中央に交通島が設けられている(出典URL

これは歩行者が車道を横断するとき、一度に左右両方に注意を向けなくても済む(注意力のリソース要求を分散している)点に最大の意義があるデザインだと思いますが、車道の上下線を分け、それぞれの物理的な幅を車一台分に絞っている点にも注目すべきかと思います。この構造なら、駐停車すれば即座に交通を妨げることになります。

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とにかく、ピンからキリまでいるドライバーの全てに正確な交通ルールの知識や他者への思いやりを期待してもダメだというのが私の基本的な考え方です。そういう非現実的な前提に頼った施策には、安全策としての「持続性」が期待できません。

なお、上の議論では考慮しませんでしたが、自転車が車道を走ることを考えた場合、ボラードの設置は車から自転車へのハラスメント行動(車間距離を詰めて荒々しくアクセルを吹かすなど)を助長する可能性があるので、あまり推奨できません(下記ページも参照)。

Hembrow, D. (2015) ‘A “Pinch-Point” design which slows cars without “pinching” bikes’, 6 July. Available at: http://www.aviewfromthecyclepath.com/2015/07/a-pinch-point-design-which-slows-cars.html (Accessed: 21 March 2018).


なので理想的には車道を一方通行化してcontraflow bike laneを用意するとかですかね。道の先に消防署はありますが、任務中の緊急車両には一方通行規制(道路交通法8条1項)が適用されないので(道路交通法41条1項)。