2018年3月16日金曜日

自転車活用推進計画についてのアンケート実施はどこで報じられているか

国土交通省が自転車の計画についてアンケートを実施しています:

国土交通省 (2018) 報道発表資料:自転車活用推進計画の骨子について、アンケートを実施します!~本年夏までの計画策定に向け、引き続き検討してまいります~. Available at: http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000955.html (Accessed: 15 March 2018).

今回は幅広い層から意見が集められるでしょうか?



省内に置かれた推進本部は去年11月にも同様のアンケートを実施していました。この時はアンケート回答フォームに様々な問題があることが指摘されていました:

赤松正行 (2017) ‘国土交通省自転車活用推進本部事務局が「自転車の活用の推進に関するアンケート」を実施中’, Critical Cycling, 8 November. Available at: http://criticalcycling.com/2017/11/national-questionnaire-about-bicycle/ (Accessed: 15 March 2018).

その指摘項目の一つに、
事前周知がなされず期間も短い。専門サイトcyclistですら、ニュース掲載が11月7日と数日後だ。一般の人へのアプローチはどうだろう?広く意見を求めるよう工夫して欲しい。
というものがありました。日本は自転車利用人口が多いという点では恵まれた国ではありますが、行政に能動的に関わろうとする人が少なく、自転車政策に意見を出す層はヴォーカル・マイノリティー(主にスポーツサイクリスト)に偏りがち。ママチャリなど普通の自転車で通勤通学、子供の送り迎え、買い物などをする人々の要望が政策に反映されにくいという問題を抱えています。

今回のアンケートで国土交通省(2018)は
広く国民の皆様から御意見をお伺いする ため、本日より アンケートを実施します。
(無駄スペースは原文ママ)

と意図を説明していますが、実際に広く声を集められるかどうかが気になるところです。

現状の自転車環境に不満はあるものの、わざわざ声を上げるような手間は掛けたくないと考えているサイレント・マジョリティーの関心を引き付けられなければ、組織力の高いスポーツサイクリスト団体の意見でアンケート回収箱が埋め尽くされてしまうでしょう。

多様な意見を集めるために国土交通省が具体的にどんなことをしているのか(例えば無作為抽出した市民にギフト券などの報酬を提示して回答を求めるなど)は分かりませんが、とりあえず、アンケートの実施がどこで報じられているかを調べてみました(「自転車活用推進計画の骨子」でGoogle検索。2018年3月16日20:00現在):

自転車活用 推進計画骨子を公表 (2018-03-14) 建通新聞. Available at: http://www.kentsu.co.jp/webnews/view.asp?cd=180314500047&pub=1 (Accessed: 16 March 2018).

自転車活用 推進計画骨子を公表 (2018-03-14) minkabuニュース. Available at: https://news.minkabu.jp/articles/urn:newsml:www.kentsu.co.jp:20180314:a260279ae51b97e74707e92ebd654853 (Accessed: 16 March 2018).

自転車活用推進計画(骨子) (国土交通省) (2018-03-15) 経済レポート. Available at: http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/337134/?rss (Accessed: 16 March 2018).

シェアサイクルと公共交通機関との接続を強化へ---自転車活用推進 国交省計画 (2018-03-16) レスポンス(Response.jp). Available at: https://response.jp/article/2018/03/16/307312.html (Accessed: 16 March 2018).

自転車活用推進計画の骨子についてアンケート実施中。3/27まで (2018-03-16) サイクルスポーツ.JP. Available at: https://www.cyclesports.jp/depot/detail/93705 (Accessed: 16 March 2018).


建設業界紙が最も早く、株情報サイトがそれを同日に転載、翌日は経済ニュースサイトが報じ、アンケート開始から3日経ってようやくクルマ情報サイト、自転車情報サイトがニュースにしています。大手新聞社のサイトには今のところ記事が見当たりません。



余談1

私は今回のアンケートに途中まで回答していたんですが、前回同様、回答フォームの自由記述欄のテキストボックスがコピー、ペーストを受け付けない不親切な仕様だったので、回答を放棄して推進本部に電話で指摘しておきました(役所は今でも電話文化だと聞いたので)。自分の回答をローカルPCに保存できなかったり、入力した文がタイムアウトでパーになったりするのはもう御免なので。


余談2

自転車レーンのタイプ別の安心感を調査したポートランド州立大学の研究ではアンケート回答者に抽選で金券を提供していました:

McNeil, N., Monsere, C. and Dill, J. (2015) ‘The Influence of Bike Lane Buffer Types on Perceived Comfort and Safety of Bicyclists and Potential Bicyclists’, Transportation Research Record: Journal of the Transportation Research Board. doi: 10.3141/2520-15.
Respondents could be entered into a drawing for one of three $100 Amazon.com gift cards.
無報酬の調査では、「無報酬でも構わない、どうしても聞き入れてほしい意見がある」というヴォーカル・マイノリティー層に回答が偏ってしまいますよね。