2015年9月9日水曜日

自転車道を歩道側に配置する理由

2015年9月10日 改行ミス修正、補足の追加
2015年12月16日 引用動画・改行・マーカー着色の追加

私は現時点では、交通の特に激しい幹線道路については、

駐車枠よりも車道中心側に自転車レーンを配置するのではなく、

歩道側に自転車道を配置するのが好ましいと思っています。

その理由を改めて説明します。



利点

1. 自転車利用者にとって安心
自転車道なら、速度が高い車の流れから大きく隔てられているので、子供や高齢者の利用者も含め、誰でも安心して通行できます。


2. 歩行者にとって安全

安心で走りやすい自転車道が出来れば歩道を走る自転車利用者が減るので、歩行者にとっても道が安全になります。


3. ドライバーにとって安心

車道と一続きの自転車レーンと違い、自転車道なら自転車がふらついたりして急に車道に飛び出してくる心配が無いので、ドライバーも安心して運転できます。



反論

1. 自転車が歩行者の横スレスレを走る事になる


歩道と自転車通行空間を色で分けただけだとそうなるでしょう。縁石で段差を付ければ歩行者も自転車もそこから一定の距離を取りますが、それでも小さな子供が不意に飛び越えてしまうかもしれません。その場合は、歩道と自転車道の間に柵や花壇などを配置するという手が考えられます(1)。

1 Tokyo By Bike (2014) "Tokyo Bicycle Lane Improvements"

なお、横を通過する自転車を歩行者が危険だと感じ始める距離(肩先からではなく体の中心から)は、相対速度が
  • 15km/hの場合は0.80m、
  • 20km/hの場合は0.89m、
  • 25km/hの場合は0.96m
という報告があります(2)。但し、これは対向すれ違い実験に基づいた値で、追い越しの場合は更に大きな側方間隔が必要になるでしょう。また、報告には実験参加者の年齢が書かれていない点に注意が必要です。

2 吉村正浩・足達健夫・萩原亨・内田賢悦・加賀屋誠一
歩行者・自転車双方の心理を考慮した歩道空間の安全性評価に関する基礎的研究
『第31回土木計画学研究発表会・講演集』2005, pdf p. 4


2. 歩行者が車を降りた途端に自転車に撥ねられる/自転車が車の左側のドアに衝突する

この問題は、

駐車枠と自転車道の間に0.5〜1.0mほどの幅の緩衝帯を挟めば解決します。

これは、安全マージンの不足という細部の問題であり、自転車道の配置そのものの問題ではありません。


3. 車を降りた人が自転車道を横切らなければならない

現実的には自転車が何十台も引っ切りなしに走ってくるわけではない(3)ので、流れが途切れたタイミングならそれほど苦労せずに自転車道を渡れるのではないでしょうか?(横断歩行者の側に優先通行権を設定する事も考えられますが、利用者には守られないでしょう。)

3 大都市の街中には信号機が多いので、自転車の流れには必ず疎密が生まれます。

尤も、自転車と衝突するリスクはゼロではないので、この点では、駐車枠よりも車道中心側に設置した自転車レーンの方が優れています。

但し、交通の激しい幹線道路の自転車レーンは利用率が3割程度(4)で、残りの7割の人は歩道を通行しているのが現実です。大雑把に言えば、車に乗り降りする人と自転車との衝突リスクは、自転車レーンの整備では3割しか減らせません。

4 ランキング日記「自転車ナビライン千石交差点の資料を検証する(1)恣意的な国交省報告

また、歩道上では自転車が歩行者の間を不規則に縫って走るので、歩行者にとってはその動きが読みにくく、予想外の方向から走ってくる事もあって危険ですが、自転車道があれば自転車がそこを整然と走るようになるので、歩行者は
  • どこで
  • どの方向に
注意を向ければ良いのかが明確になります。この予測可能性の改善で衝突リスクがどれだけ減るかが鍵です。


4. 車道を通るように自転車利用者を指導すれば良い

それは交通の比較的穏やかな路線なら可能でしょうが、ここで議論しているのは交通の激しい道路、東京23区で言えば、内堀通り、桜田通り、青山通り、新宿通り、靖国通り、白山通り、昭和通りのような重交通路線の事です。

そしてそういう路線ほど、実は自転車道を設置する余裕が有ったりします。

大型車の通行が多く、車の実勢速度が50km/h以上になるような環境では、たとえペイントで視覚的に分離されても、自転車利用者の誰もが安心して通れるわけではありません。不安感から歩道を選ぶ人が多いですし、そもそも自転車に乗らずに他の移動手段を使う場合もあります。

車道通行を強制すれば、中には自転車に乗るのを止めて車に乗り換える人もいるでしょう。車は自転車より遥かに殺傷力が高いですから、交通社会全体で見ればリスクが増えるかもしれません。


5. 車を利用する高齢者や障害者にとって優しくない

身体能力に関わらず誰もが自由に移動できる社会は確かに望ましいものですが、だからといって、高齢者や障害者の安全・安心を追求するためにその他の道路利用者の安全・安心を大きく損ねて良いわけではありません。もちろん両立できれば最高ですが、それが叶わないなら、リスクをどう分担するのが社会全体として最適かを考える必要があります。

また、そもそもなぜ高齢者や障害者が車を利用しているのかについても考えるべきでしょう。本当は自転車やハンドバイクやシニアカーでも移動できるものの、道路環境が危険なので断念して車に頼り、その結果体力の低下が加速している人もいるかもしれません。安全な自転車道はそうした利用者の受け皿になり得ます(5, 6)。

5 CityLab (2012) "The 8 to 80 Problem: Designing Cities for Young and Old"
6 このブログ「自転車道は荷卸しの障害にならないし車椅子にも優しい


自転車にとって安全かつ安心な通行環境が有れば、高齢者や障害者も車に頼らず自立して移動できる。



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