2015年1月19日月曜日

「オランダでは」と言わない方が良い?

Streetsblog USA(2015年1月15日)
Dutch Suburbs Are Like America’s, and Protected Bike Lanes Work Fine There

オランダの郊外の道路環境はアメリカのそれと似ている、という記事。
日本にとっても非常に示唆的な内容です。


People the in U.S. street design world — sometimes even people who write for this very website — regularly say that U.S. development patterns mean that Dutch street designs can’t be immediately adopted in the States.
アメリカの道路設計の世界では——このサイトにコメントを書き込んでいる人ですら——アメリカはオランダとは/*土地の*/開発形態が違うので、オランダの道路デザインをそのまま導入する事はできない、と繰り返す。

That’s a lot less true than you might think.
だが、その想像は現実とはだいぶ違う。

Of course some ideas can’t/won’t port over wholesale. But especially by European standards, the Netherlands is actually probably one of the most spatially similar places to much of the U.S.
もちろん幾つかのアイディアは広範には適用できないかもしれない。だが、ヨーロッパ基準で言えば、実はオランダは空間の作り方がアメリカの多くの地域と最も似ている国の一つなのだ。
そして記事はオランダ郊外の多車線道路やショッピングセンターの広大な駐車場の写真を次々提示していきます。


記事の最後に、ハッと気付かされる事が書かれていました。
The spatial argument, by contrast, doesn’t factually hold up in many cases when you look at the bulk of Dutch infrastructure. When it comes to public messaging, protected bike lanes may need to be sold to Americans as Our Great New Idea, rather than That Exotic European Stuff. But there’s got to be some balance. We also need to show that Europe, admirable as its street design is, is actually not always that exotic.

空間に関する議論/*「オランダはアメリカと違って」云々の反論*/は、オランダのインフラの大部分を見れば、大抵の場合、事実と違うので成立しない。ただ、一般市民に向けてのメッセージ戦略となれば、構造的に分離された自転車レーン/*自転車道*/を、欧州という異国に独特なものとして紹介するのではなく、「俺たちが考えた凄いアイディア」としてアメリカには売り込む必要が有るかもしれない。だが、それにしたってバランスというものが有るはずだ。欧州の道路デザインは素晴らしいが、実は自分たちの文化とそれほど違うものではないという事も、併せて示すべきだろう。

専門家ではない一般のアメリカ人は、オランダも意外とアメリカに似ているという現実を知らないので、「オランダでは」と言ってしまうと最初から思い込みで「そんなの参考にならない」と撥ね付けてしまうんですね。

これと全く同じ構図が日本国内の議論にも見られます。ヨーロッパと聞けば最初から「あっちは道が広いから」と決めつけ、旧市街の入り組んだ狭い街路に目を向けようとしません(同時に、日本国内にも広い道路が存在する事は無視する)。それで、日本にも参考になる知見をみすみす見逃してしまう訳です。

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という事は、このブログで今まで何となく書いてきた「オランダでは」も逆効果になっていた可能性が有るんですね。難しいな、イメージ戦略。


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震災と原発事故で一般市民の間に広がった根拠の無い不安を払拭するには、科学者は単に客観的な事実を伝えるだけでなく、どのような態度でメッセージを発するかがとても重要だという話が載っています。