2014年5月17日土曜日

街中の駐輪問題と台所の収納問題

中心市街の路上に駐輪された自転車は
たとえ歩行者の通行の邪魔になっていなくても
即時撤去している自治体が有ります。


こうした病的なまでに潔癖な対応を見ていると、
台所で出しっ放しになっている調味料や調理器具に
一々目くじらを立てる神経質な人が連想されます。
(昔は私自身がそうでしたが。)

ただ、商店街や駅前での
自転車利用者 vs 自治体の自転車対策担当
という対立は、各家庭の台所での
姑 vs 嫁
という構図とは質的に違います。




街中に停められている自転車の背景や、
  • 買い物の際の短時間駐輪
  • 通勤、通学の長時間駐輪
  • 駐輪ではなく投棄

それが引き起こす問題の程度は様々ですが、
  • 健常者も含めた歩行者全般の通行が困難
  • 視覚障害者にとっては危険
  • 車の通行が困難
  • 単なる美観上の問題

長年、駐輪自転車対策に苦しんできた自治体の担当者は、
そんな違いには考えが及ばず、
「とにかく風景の中から自転車を一掃しなければならない」
という妄執に取り付かれているように見えます。

自転車が停まってても別に困らなくね?

台所で喩えるなら、
冷蔵保存しなければならない調味料や
使い終わった容器が散乱しているのは問題ですが、
鍋やお玉が壁に掛かっているのは、効率を極めた姿として
寧ろ格好良いものです。レストランの厨房がそうですね。

もちろん、使う度に収納する手間を掛けてでも
綺麗に片付いている台所を良しとする価値観もありです。
個人宅の台所ならそれは住人の自由ですし、
出し入れによる時間損失も数秒程度で済むでしょう。

ですが、駐輪政策は違います。

単なる美観上のこだわりで買い物客に遠くて不便な
大規模駐輪場の利用を強制したり、自転車利用を止めさせて
徒歩やバス移動をするように仕向けるのであれば、
それは住民から時間資源を大規模に奪い取る事になります。


駐輪による問題の程度を無視した一律の規制

自転車は存在そのものが都市の汚点であるとする価値観が有る一方で、
自転車の利便性と美観を両立する工夫をしている都市も有ります。
オランダ北東部の都市、フローニゲンは駅前の大規模駐輪場が有名ですが、
以前は確かに美しいとは言い難い光景でした。

オルガン奏者 Jonathan Oldengarm 氏の旅行記より(写真URL

しかし現在は未来的な半地下駐輪場に生まれ変わっています。
入口はなだらかなスロープなので自転車に乗ったままでも出入りできます。




内部の様子

フローニゲンでも駅前広場は駐輪禁止で、
駐輪場外に停められた自転車は即時撤去されています(情報源)が、
駅舎の中央口から僅か5mという一等地に
収用台数1万台超の駐輪場を用意した上での措置です。

2014年9月1日訂正

この半地下の駐輪場単体の収容台数は5150台です。
駅前の他の駐輪場も合わせると約1万台になります。
詳しくは CROW の事例紹介のページを参照。


こうした例と比べると、日本の駐輪政策(というより“対策”)が
如何に生活者の需要を無視したものかが鮮明に見えますね。


過去の関連記事
Fietsstad賞を逃したフローニゲン、敗因は?


この他、次のブログの記事も
日本の駐輪対策の問題を見事に指摘しています。

Tokyo by Bike(2014年5月17日)
Fukuoka Targets Illegally Parked Bicycles