2014年5月31日土曜日

自転車撤去の根拠になっているはずの法律

自治体による自転車の強制撤去に
正当性を与えているはずの法律には
法律の趣旨の根幹を揺るがす曖昧性と
潜在的な自己矛盾が含まれていると思います。



自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S55/S55HO087.html
(自転車等の駐車対策の総合的推進)
第五条

// 中略

 地方公共団体、道路管理者、都道府県警察、鉄道事業者等は、駅前広場等の良好な環境を確保し、その機能の低下を防止するため、必要があると認めるときは、法令の規定に基づき、相互に協力して、道路に駐車中の自転車等の整理、放置自転車等(自転車等駐車場以外の場所に置かれている自転車等であつて、当該自転車等の利用者が当該自転車等を離れて直ちに移動することができない状態にあるものをいう。以下同じ。)の撤去等に努めるものとする。

ここで問題になるのは「良好な環境」という非常に主観的な表現です。
自転車の存在そのものが目障りだと感じる人にとっては
視界に自転車が一台も無い事が「良好な環境」になるんでしょうが、
買い物などで自転車を使う人にとっては目的地のすぐ近くに
自由に駐輪できる事が「良好な環境」と言えます。

「機能の低下」についても、
歩行者や緊急車両の通行障害しか念頭に置かない人と、
移動手段としての自転車の「機能」まで含めて考える人では、
意味合いが大きく変わります。

従って、撤去が「必要である」かどうかの判断は、
(駐輪自転車が通行障害を引き起こしていない場合は)
【街の美観】派と【自転車の利便性】派で割れる事になります。

通行の障害になっていない「放置自転車」

ついでに言うと、この5条6項は、放置自転車の定義を
「駐輪場以外の場所に置かれた自転車」としている点も問題です。

或る場所を駐輪場と定めるか否かによって、
その場所に停められた自転車が放置自転車かどうかを
間接的に決定できてしまうからです。

自転車を目障りに思う自治体は小規模分散型の駐輪場を
整備しようとしないので、自転車利用者にとって便利な
「店先駐輪」は自動的に放置自転車にされてしまいます。

ちなみに「小規模分散型」というのは
例えば下の写真のような物です。

オランダ、アームスフォートの小規模分散型の駐輪ラック
(2010年8月に現地で撮影)


オランダ、アームスフォートの小規模分散型の駐輪ラック
(2009年9月に撮影された Google Street View より)


小規模分散型の駐輪を認めず、
目的地から離れた大規模駐輪場に
自転車を押し込めようとする日本の自治体の実態は、
この法律の目的と矛盾しています。

自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S55/S55HO087.html
(目的)
第一条  この法律は、自転車に係る道路交通環境の整備及び交通安全活動の推進、自転車の安全性の確保、自転車等の駐車対策の総合的推進等に関し必要な措置を定め、もつて自転車の交通に係る事故の防止と交通の円滑化並びに駅前広場等の良好な環境の確保及びその機能の低下の防止を図り、あわせて自転車等の利用者の利便の増進に資することを目的とする。

現実には自転車利用者の利便性は下がってますよね。
わざわざ数百メートル先の駐輪場まで停めに行かなきゃならないんだから。

この法律は、自治体に自転車の強制撤去の口実を与える一方、
利用者にとって最適な形の駐輪インフラを整備するようには求めていません。

私には、この法律そのものが
潜在的な自己矛盾を内包しているように思えます。

自転車に対する排斥的な感情が
法として具現化したって事なんでしょうかね。

スポーツ自転車の楽しさを一度でも体感すれば、
そういう敵対感情が薄らぐと思うんですが……。



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