2014年4月27日日曜日

Fietsstad賞を逃したフローニゲン、敗因は?

2014年4月29日 駅前駐輪場についての情報を追加

オランダ国内で最も優れた自転車都市を選ぶ Fietsstad(= 自転車都市)賞。
自転車都市として世界的にも名高いフローニゲン(Groningen)は
2002年に優勝しており、二度目の栄冠を目指して2011年大会にも参戦しましたが、
セルトーヘボス(s'-Hertogenbosch)に破れてしまいました。



敗因は何だったのでしょうか。



David Hembrow 氏が自身のブログに
ニュース映像の簡易な英語訳を書いてくれています。

A view from the cycle path(2011年12月19日)
Groningen. Not Fietsstad 2011.
  • 高齢者にとって新しいベラーハ橋の勾配はラルプデュエズのような試練。
  • オランダで最も危険な交差点(*)が在るのがフローニゲン。
  • 駅の駐輪場の収容台数が不足している(**)。

* オランダで最も危険な交差点



動画内の説明文から:
交差点を安全に通行する為には、
誰もが一箇所で複数の方向を確認しなければならない。
誰もが次に何が起こるか予見できず、どうすれば良いか分からない。
この不確実性が危険を招いている。

** 駐輪場の収用台数が不足している
フローニゲン駅の駅前駐輪場は、Fietsstad 2011 の結果が出る9ヶ月前の時点でも9280台の収用台数を誇っていました。
10年前に比べて3倍以上という充実度です。
しかし、鉄道・バス利用者の増加や学生数の増加で、
週末には1万台を超える駐輪需要が発生しており、
この点が受賞を逃す一因になってしまったようです。
市当局は今後、2015年まで毎年500台分ずつ
無料駐輪場を増設する計画を示しています。
(情報源:FIETS BERAAD ニュース 2011年2月18日

ちなみにこの駐輪場、タクシープールやバスターミナルを
押しよけて、駅中央口の正面の一等地に堂々と陣取っています。
半地下構造で美観も損ねず、非常に緩やかなスロープで出入りも楽。
画像は「station groningen fietsenstallingen」でググってください。

確かにフローニゲンはオランダで、恐らくは世界でも、
最も自転車のモーダルシェアが高い都市です。


Groningen: The World's Cycling City from STREETFILMS on Vimeo.

動画の説明文より:
自転車のモーダルシェアは50%、市の中心部では60%にも達する。

しかし、その華々しい数字は学生人口の多さに
助けられている面が有るようです。

A view from the cycle path(2014年4月24日)
On-road cycle-lanes. The Good, The Bad and the Ugly (mostly bad and ugly)

Like all cities which have many students, this demographic group, who are relatively easy to attract to cycling for a variety of reasons and will cycle more given any particular conditions than other demographic groups, helps to mask the problems with infrastructure.

学生の多い都市全てに言える事だが、都市人口の中のこのグループは、
多くの理由から自転車の利用に魅力を感じやすく、どのような
環境であろうと他のグループよりも自転車を利用するので、
インフラの欠陥を覆い隠してしまう事になる。

上のニュース映像で触れられているような、
老人には厳しい坂道や危険な交差点の放置が、
この副作用の発現を如実に物語っていますね。

(急速に高齢化が進む日本には耳の痛い話です。)

フローニゲンは、学生によって実力以上に高く出た数字に慢心し、
自転車インフラの改善を怠った。その足元を、
弛まぬ努力を続けてきたセルトーヘボスに掬われた——。

受賞を逃した背景にはこのような構図が有ったようです。


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さて、この問題、日本ではどうでしょうか。

国土交通省 道路局、警察庁 交通局(2012)
『安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン』

pdf p.20
なお、勾配が急な道路、構造上対応が難しい長大橋や長大トンネル等を含む既存道路については、電動アシスト自転車の普及状況等も考慮しながら縦断線形等の見直しや自転車通行空間の確保等、道路の改良等の検討を併せて行うものとする。ただし、 道路改良等が困難な場合は、利用者の利便性を著しく損なわない範囲で適切な代替路を選定することを検討するものとする。

最初っから劣悪なインフラに逃げる道筋を確保してんじゃねーか!
インフラで手を抜く → 自転車のモーダルシェアの伸び代が縮む
という事が分かってないんでしょうか。

殊、自転車インフラに関しては、
カイゼンの本場は間違い無くオランダ。
日本はテイタイの国ですね……。