2013年11月30日土曜日

自転車レーン推進派が見落としている事

「自転車道のように柵で囲まれて狭い空間に閉じ込められるのは嫌だ」
「そんなのは人間的じゃない。もっと広い所をのびのびと走りたい」

自転車レーン推進派にありがちなマインドの一例だと思いますが、
彼らは「安心感」という重要な因子を見落としています。


実際に自転車で車道を走っている方は体感でお分かりだと思いますが、
車と同じ空間を走るという事は、

バトルです。

路上駐車に進路を妨害され、
右に回避すれば後続車に追い立てられ、
左に寄ればドアが突然開く。

幅員が狭い所では幅寄せされ、
歩行者が手を上げれば鼻先にタクシーが割り込み、
時にはクラクションを浴びせられ、
時にはアクセルを乱打される。

シューティングゲームに喩えるなら、
常に残機ゼロ、残弾ゼロ、そして
敵機の大半は背後から攻めて来る大型機。

非常にゲームバランスが悪いバトルです。

いくら路面が平滑だからと言っても、
いくら統計上の事故リスクが低いからと言っても、
こんな環境では正直、安心して走れません。
日々戦地に赴くのは疲れます。

人は理性だけで行動を決めているわけではなく、
動物としての本能に動かされている部分も有ります。

客観的な「安全」に加え、
主観的な「安心」も加わって初めて、
自転車レーンは子供から老人まで、
リカンベントからハンドバイクまで、
誰でも使えるユニバーサルなインフラになると思います。

それを満たすのはやはり、縁石やボラードで
車から物理的に守られた自転車レーン(※)ではないでしょうか。


※このブログでは、より体系的で直感的な用語を提唱しています。

一般的な用語 このブログの用語
自転車レーン
自転車通行帯
自転車レーン(視覚分離型)
自転車道 自転車レーン(構造分離型)
自転車専用道路 サイクリングロード
自転車歩行者道 歩道
歩道上の自転車レーン
自転車通行指定部分
歩道上の模様


冒頭に挙げた「狭い空間に閉じ込められる」というのは、
実はこれとは論点がズレています。

車から守られている車から守られていない
幅員が広い 理想実質的に駐車レーン
幅員が狭い 現状の自転車道 現状の自転車レーン

現状の自転車道が狭い事を理由に、
車から守られた構造まで否定してしまうのは、
複数の論点をごっちゃにした議論です。

これは間違い。

ちゃんと問題を切り分けて考えましょう。



2013年12月10日追記

「安心感」を蔑ろにした結果どうなるかを雄弁に語る事例が有りました。

岡山駅の北東にある市役所筋(写真は岡山国道事務所)

車線の数を維持したまま、車道の端の余白に糞狭い自転車レーンを引いて、
「いそぐ自転車は自転車レーン、ゆっくり自転車は歩道」と誘導しています。

車の恐怖を我慢してでもスピードを出したいという人でもなければ、
こんな狭い自転車レーンはとても安心して使えない。
そういう実態を国道事務所が自ら認めています。

分かってんだったらさっさとまともなインフラ整備しろよ。

ちなみに同事務所の報道発表にはこんな事が書かれていました。

岡山市内の道路では、既に自転車レーン等の整備が進められていますが、自転車が自転車レーン等を走行していないなどの問題点が指摘されています。そこで、

// 中略

自転車利用者が自発的に自転車レーン等を走行するための誘導看板(仮設)などを設置し、効果検証を行います。

(赤字は原文のまま)

……。

役人の頭の中がどうなってるのか、誰か教えてくれないか?