2013年5月15日水曜日

国交省の自転車ガイドラインの感想 pp.63-64 交差点の設計

国土交通省が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)
を読みました。

問題点が無いか1ページずつ見ていきます。


以下、ページ番号はPDFファイル上の番号基準です。
紙面のノンブルとは一致していません。

p.63
自転車が双方向通行となる自転車道の場合は、
自動車と逆方向に通行する自転車の出会い頭事故の危険性、
交差点内での自転車同士の交錯の危険性等の課題があることから、
交通状況や沿道状況を踏まえ、個別に検討を行うものとし、
ここでは、自転車一方通行規制を実施した自転車道、
自転車専用通行帯、車道混在の場合について示す。

双方向型の設置に可能性を残してますね。
自治体の道路管理者が抜け道に使いそうな文言です。

「個別に」というのも問題です。道路というものは
規格が全国統一されているから利用者が迷わず使えるのであって、
イレギュラーな要素は事故の誘因になります。


p.63
交差点の形態は、
(中略)
自転車道または自転車専用通行帯の確保が可能な場合、
交差点流入部において、左折巻き込み事故を防止するため、
(1)交差点手前約30m程度で自転車道または
自転車専用通行帯を打ち切り、車道左側部の車線幅員を拡げ
路面表示により自転車の通行位置を明確化し、
自転車と左折する自動車を混在させて一列で通行させる手法
(以下、「左折自動車のみ混在の場合」という。)

(2)交差点に自転車道または自転車専用通行帯を接続し、
自転車と自動車を分離させる手法(以下、「分離の場合」という。)
のいずれかに分類される。

仮に(1)の構造で道路が整備された場合、
以下の様な事態が想定されます。
  • 自転車道が途切れて車線幅員が広くなった箇所に路上駐車が発生する。
  • 自転車が左折車の左または右からすり抜けて前に出ようとする。

路上駐車については、自転車が車と一列に通行するのであれば
大きな問題にはならない? 本当にそうでしょうか。

仮に車線幅員が絶妙な狭さで、路駐車両がボトルネックになると、
車の流れは滞り、自転車も足止めされます。無駄に。
すると、自転車は車の左右をすり抜けて前に出ようとするでしょう。

自転車と左折車を一列で通行させるという考えは、
安全面では一理有ります。私もこの通行方法を実践しているお陰で
交差点での事故・ニアミスはほぼ皆無です。

が、自転車にも車の渋滞に嵌まることを強要する事で、
(主には都市の)交通モードとしての自転車の優位性を
損ねるという面も有ります。

自転車を都市内で最速の移動手段として
マネジメントしていくという視点が、ガイドラインには欠けています。


p.63
(2)の場合は、交差点直近まで自転車と自動車が分離され
自転車利用者の安心感はあるものの、信号制御により
自動車と自転車を分離しない限り自動車が左折時に後方から
進行してくる自転車に注意する必要があることに加え、
自転車が優先意識を持ち、自動車を意識しなくなる可能性があるため、
通行方法を自転車に周知することに課題がある。

p.61では自転車専用信号の設置を検討すると言っておきながら、
ここではまるで「信号制御は変更したくない」みたいな書きっぷりです。

無意識のうちに「車の通行容量を死守する」ことが前提になってますね。
車の渋滞を信号制御で解決しようとするから論理が歪むんです。
環境の観点から、渋滞対策は台数規制を主軸に考えるべきです。


p.64
また、自転車一方通行規制を実施した自転車道を整備する場合に、
交差点部において幅員の確保が困難な場合は、自転車と自動車を
混在させることは望ましくないため、必要に応じて規制速度を変更し、
自転車専用通行帯等の他の形態により整備する、または
歩行者の安全が確保される場合において
改めて自転車の徐行義務について注意喚起した上で
自転車歩行者道に接続する
、もしくは代替路を検討するものとする。

徐行義務は基本的に無視されると考えるべきです。

鉄道や航空は高い安全意識を持ったプロが運行していますが、
道路は自分の都合しか考えない素人が行き交う空間ですから、
ヒューマン・エラー対策はそうした低レベルな人間に合わせて
組み立てないと事故防止の効果を発揮しません。

また別の見方をすれば、徐行義務を課すという発想自体が間違っています。
徐行箇所で加減速を強いられれば、旅行速度が低下するだけでなく、
エネルギー効率も悪化します。これでは移動手段としての
自転車の魅力が薄れてしまうでしょう。