2013年5月15日水曜日

日本の自転車インフラは周回遅れ

国土交通省と警察庁が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)では、
これまでと比べて画期的な指針が幾つも示されていますが、
そのどれもが手放しで誉められるものではありません。

中には、オランダが
「危険だと分かったので、とうの昔に廃止した」
と切り捨てた道路構造も含まれています。




これはガイドラインのp.90(PDF基準)に掲載されている図です。
自転車は交差点を直線的に通過できるようにすべきだ
という、一見正しいようでいて、
実はその安全上の根拠がハッキリしない
信念に基づいて設計されています。

(直線的に通過できる交差点は自転車にとって
快適ではありますが、安全とは限りません。
国交省は快適と安全を混同しているのでしょうか。)

図では、右から左へ進む自転車が
左折車の動線と鋭角で交差しています。
この整備形態についてガイドラインは、

p.90
分離帯による左折導流路のある交差点における自転車通行空間は、
本線(直進車線)に沿って連続して設置するものとする

ただし、左折自動車が減速し左折導流路に移行する区間
(以下、分流部という。)では、自転車との交錯が生じることから、
自転車通行空間の延長線上の部分に自転車の通行位置及び
通行方向を明確化し、左折自動車と混在することを示す路面表示
(例えば、矢羽根型等)を設置する他、交錯が生じる手前において、
看板または路面表示を設置し、自動車、自転車双方への
注意喚起を行うなどの安全対策を検討するものとする。
と説明しています。

私は、看板や路面標示は基本的に無力で、
「安全対策」と呼ぶに値しないものだと思っていますが、
それはさておき、

実はこれと同じ道路構造が、
以前オランダで整備されていました。



しかし、

The problem of this design is
(この構造の問題は)
the extremely bad angle of crossing.
(交差角度が極めて危険だという事です。)

A driver has to look over his/her right shoulder
(ドライバーは肩越しに後方を振り返る必要が有ります。)
to see if there are someone on a bicycle.
(自転車がいないかどうかを確認する為に。)

For that reason,
(この理由から、)
the Dutch stopped building lanes like this
(オランダはこの種の自転車レーンの整備を止めました。)
a long time ago.
(とうの昔に。)
(動画内のナレーションから)

という事で、数十年前からは全く別の改良型構造が採用されています。



This is not  experimental design.
(このデザインは実験段階のものではありません。)

It has been used for decades in the Netherlands.
(オランダではもう何十年間も使われてきました。)
(動画内のナレーションから)

そして、危険であると分かった旧型は、
Junctions like that seem more usual in Denmark.
(デンマークではしばしば見られますが、)

A few do still exist (I know just one remaining
junction approach like that in Utrecht)
but they are phased out as soon as possible.
(オランダ国内ではもう数ヵ所しか残っておらず、
それらも順次改修されて消滅する予定です。)
(動画投稿者のブログ記事から)



実はこの旧オランダ型(日本の現行案)と
幾何学的にそっくりな道路構造が
環八と井の頭通りの交差点付近に有ります。
(東京都杉並区高井戸西3丁目)


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本道の西行き車線から左前方に枝分かれする道と、本道に沿った横断歩道が
鋭角に交差しています。自転車レーンではありませんが、
自転車は歩道・横断歩道を通行しているのが実態なので、
車との位置関係は旧オランダ型と同じです。

で、この交差点で


歩道から横断歩道に出てきた自転車に気付かず、
左折を始めた車が衝突の寸前で急停止する
というニアミス事例を見た事があります。

自転車を見落とした車はやはりというか何というか、
黒のミニバンでした。



今、日本の国交省と警察が作ろうとしているインフラは、
こういう時代遅れの危険なものだという事です。

さあ、分かったら今すぐオランダ視察をやり直してこい!