2013年3月11日月曜日

国交省の自転車ガイドラインの感想 pp.55-58 歩道橋付近

国土交通省が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)
を読みました。

問題点が無いか1ページずつ見ていきます。



以下、ページ番号はPDFファイル上の番号基準です。
紙面のノンブルとは一致していません。


歩道橋や地下道の出入り口と
自転車通行空間の関係について説明した部分です。


p.55
(1)基本的な考え方
周辺の交通状況や沿道状況の変化により、
必要性の低下した立体横断施設については、
撤去も含めて検討するものとする。

歩行者に上下方向の動きを強制する歩道橋・地下道は
本来的に車優先の思想で作られていますから、
「撤去」の文言を入れた事は評価できます。

しかし、その検討条件として「状況の変化」という
受動的な表現に留まっているのは残念です。
交通需要は能動的にコントロールしていくものです。

p.55
歩道橋で死角になっている箇所で、自転車が歩道から自転車道に
飛び出す事が考えられます。実際、亀戸の自転車道では、
歩道橋の死角に自転車道の出入り口が設けられており、
自転車同士の出会い頭衝突の危険がしばしば観察できます。

ガイドラインでは何の注記も有りませんが、
歩道橋・地下道出入り口の付近では
自転車道と歩道の行き来ができないように
連続して柵を設置すべきです。

p.55
自転車道に屈曲部を設ける場合は、
「1.2.1 自転車道(6)線形」を参考にするものとする。

この「線形」は以前にも出ましたが、改めて問題点を指摘します。

ガイドラインでは設計の根拠とする自転車の想定速度が示されていないので、
恐らく道路管理者は、歩道走行に特化したママチャリを想定して
15~20km/h程度を線形の計算基準にするでしょう。

実際、国交省が実施した自転車の旅行速度調査でも、
単純に足元の販売実績に基づいて
そうした低級な自転車の速度しか調査していません。

すると、スポーツ自転車の通行台数が多い
通勤道路では事故リスクが上がります。


p.55
さらに、自転車道の車道の進行方向に対面する部分に
車両用防護柵を設置することが望ましい。(図Ⅱ-14 参照)

防護柵を設置するだけでは、歩道橋直近の車道上に路上駐車されて
自転車道に死角が生じる可能性が有ります。


p.56
車道側に自転車道を設置できず、歩道側の道路空間に
余裕がある場合は、立体横断施設等出入口部分を
交通島として歩道側に自転車道を設置するものとする。

歩道側に余裕が有るんだったら、
歩道橋をこそ歩道側に持ってくるべきでは?


p.57
道路空間に余裕がなく、車道側、歩道側いずれにおいても
連続的な自転車道の確保が困難な立体横断施設部において、
歩行者の安全が確保される場合には、
当該部分を自転車歩行者道とすることができる。


歩行者の安全の確保が困難となる場合は、
歩道上で自転車を押して歩くことを徹底させるか、
代替路を検討するものとする。

押し歩きを徹底させる場合は、この先自転車を押し歩きする
必要があることを注意喚起する看板または路面表示等の設置の他、
自転車道の起終点部の縁石に加えて、緩やかな段差の設置
押し歩きを徹底させるため舗装材を変更
(例えば、インターロッキング・ブロック舗装等)すること、
舗装色を変更することが考えられる。


基本的に押し歩きする人はいないと想定すべきです。
特に、舗装材・色の変更はその意図すら伝わらないでしょう。

河川敷などで観察すれば分かりますが、
舗装区間から未舗装の砂利道区間に入っても
わざわざ自転車を降りる人は極めて少数です。

ブロック舗装や段差は単に自転車の乗り心地を悪くするだけで
意味が有りません。


p.57


道路空間に余裕がなく、車線幅員の縮小等によっても、
連続的な自転車専用通行帯の確保が困難な場合は、
自転車通行位置及び自動車と混在することを示す
路面表示を設置するなどの安全対策を実施した上で、
自転車と自動車を車道で混在させることを検討するものとする。

図II-18は拡大して良く見てください。
歩道橋の直後に死角が生じています。

自転車レーンは一方通行が原則ですが、
実際に整備すると逆走自転車は必ず発生します。

図の死角は出会い頭事故を誘発するでしょう。

また、車と混在させると、
傲慢なドライバーとの間で必ず摩擦が生じます。

道路利用者のマナーに頼らざるを得ない構造は
基本的に欠陥構造と考えるべきです。