2013年2月2日土曜日

国交省の自転車ガイドラインの感想 pp.42-47 自転車レーンの構造

国土交通省が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)
を読みました。

問題点が無いか1ページずつ見ていきます。



以下、ページ番号はPDFファイル上の番号基準です。
紙面のノンブルとは一致していません。


p.42

自転車レーンの幅員は「1.0m以上(1.5m以上が望ましい)」としていますが、
私は1.5mでもまだ狭いと感じます。その理由は、

  1. 歩道側から歩行者・自転車・車などが飛び出して来た時の
    安全マージンとして、縁石から最低1mは確保しておきたい。
  2. 自転車の幅員は、乗員も含めると0.6~0.7m程度有る。
  3. 自転車を追い越す車には、自転車との側方間隔を最低1mは確保して欲しい。

である事と、自転車レーンと車道の区分線を
ドライバーが走行位置の目安にしている事を報じる記事です。



仮に1.0m幅で自転車レーンを整備して、
自転車がレーン中央を走ると仮定すると、
区分線の幅0.15mを考慮しても、

自転車の右端から追い越す車の左端までは
約0.3mしか無い事になります。

普段から自転車に乗っていれば体感的に分かる事ですが、
これは十分に恐怖を引き起こす近さです。



自転車レーンなら自転車道より省スペースで
整備できるなどという考えは捨ててください。


p.45

p.45

これらの整備形式は恐らく、自転車レーンさえ設置できない
狭い道路を想定したものですが、そのような道路で
自転車を道の左端に張り付かせるのは間違っています。

自転車はクルマ様の邪魔にならないよう
端に寄って道を譲るべきだ

という価値観が抜け切らないからなんでしょうが、 
これでは、歩行者、自転車、車のそれぞれが
互いにニアミスを起こすように仕向けているようなもので、
交通の円滑な流れの為なら安全マージンを犠牲にしても良いという
誤った価値観を強化する危険性が有ります。


よりスマートな解決法は、

こうです。

自転車も車と同じ動線上を走れば良いんです。

2014年3月8日追記
路面へのマーキングでは本質的な解決になりません。
上に示した改善イメージでもまだ姑息ですね。これは駄目です。

本質的な解決策とは、クルマが歩行者や自転車に
危害や恐怖感を与えないように、
道路全体を歩行者・自転車優先だと分かるように作り替え、
ドライバーに自然と速度を落とさせる事です(15km/h程度)。

そもそも安全に追い越しできる空間が無いんだったら、
追い越しを許すべきではありません。

反対車線が空くまで追い越しを待たせるか、
車道の制限速度を20km/h程度に抑えて
車と自転車が同じ速度で流れるようにすべきです。



これはオレゴン州ペンシルヴァニア州デラウェア州イリノイ州や、
イギリスフランスで政府や政府公認団体が公式に推奨している走り方で、
車道に「自転車がレーンを占有して良い」という標識が立っている所も有ります。

(take a laneやoccuper la chausséeで検索すれば出てきます。)




この解決策の最大の問題点は、悪質なドライバーが
自転車を攻撃する可能性が排除できない事です。

自転車が車線の中央を走っていると
クラクションやアクセルの乱打、異常接近、追突などの
攻撃を仕掛けてくるドライバーがいます。

(良識有るドライバーであれば、自転車が車線の中央にいる方が
視界に入りやすく、追い越しも十分余裕が有る時しかできなくなるので、
寧ろ事故の危険は減ります。)

これは現行の免許制度、車の安全上の欠陥(*)、
そして不適切な社会通念に起因するものなので、
一つ一つ潰していく必要が有ります。

* 衝突防止装置が無く、ひとえにドライバーの操作次第。
これはシステムとして脆弱すぎます。


p.46
バス専用通行帯を活用し、バス専用通行帯の左側に
自転車の通行位置を明示するピクトグラムを設置することも考えられる。

これも私には不適切に見えます。
ピクトグラムは通行帯の中央に置いた方が良いでしょう。

バスの運転手は一種、曲芸的な運転を誇示する所が有り、
平然と自転車をギリギリの間隔で追い越す事が有りますが、
ピクトグラムを左端に設置したのでは、
そうした悪質な運転態度を助長する事になります。


p.47
歩道のない道路では、必要に応じて、自転車の通行位置を示し、
自動車に注意喚起するために、車線内に帯状の路面表示の設置や
ピクトグラムを設置することが考えられる。

帯状の路面表示により示される自転車通行空間は、
自転車の通行幅を勘案し1.0m以上確保できる場合に
実施することが望ましい。なお、自転車の走行速度が低い場合等、
現地の交通状況に応じて、75cm以上とすることもできる


これも誤りでしょう。

住宅街の中などの狭い道路では、信号機の無い交差点で、
交差道路から飛び出して来る自転車や車との出会い頭衝突を
如何に避けるかが重点課題になります。

この場合、幾ら自転車の速度が低くても、
道路の端に寄れば交差点で死角に入ってしまい、
(或いは交差道路の人・車を死角に入れてしまい、)
飛び出しに対する時間的・空間的余裕が無くなってしまいます。

道路の左端からは十分離れ、幅員に拠っては中央付近を走るのが
出会い頭衝突を防ぐ正攻法なのですが、この路面表示では
それとは真逆の危険な通行方法を助長してしまいます。