2012年12月22日土曜日

人という字

日本では、漢字の本来の成立過程とは別の
字源説や文字解釈が民間で発生し、
その解釈が教訓のネタに使われる事が有ります。




例えば、

「人という字はね、ひととひととが支え合っているから人なんですよ。」

が有名ですね。
調子に乗ってパロディー画像まで作ってしまった。



(2012年12月23日 表現が酷かったので差し替え)


しかし、学術的に不正確である事が一概に問題とは限りません。
身近な漢字を使って人生訓を印象的に伝えているのだから、
寧ろこうした営みは豊かな漢字文化の一環だと捉える事もできます。

さらに言えば、毎年大量の人間が生まれ、
必ずしも全員に正確な文字知識が行き渡るわけではない以上、
様々な解釈が作り出されて混沌とするのは言語文化の必然とも主張できます。

あれやこれやの異説に一々目くじら立てず、
全体を有るがままに一つの文化として眺める
という姿勢も有りかと。



さて、冒頭に戻って「人」の字を教科書フォントと甲骨文字で並べてみました。
(甲骨文字は藤堂明保(編) 1978 『学研漢和大事典』 学習研究社を参考にしました。)


ドラマの中の先生は左の教科書体から
「支え合う」という教訓を引き出しましたが、
右の甲骨文字にも何かメッセージを込められないでしょうか。


私はこの字形を見て
横から見た姿にしては腰が曲がっているな
と思いました。


人類の進化図では割と初期の方、Oreopithecus辺りでしょう。
ならばこんな教訓をこじつける事ができます。

ヒトは自分で思っているほど理性的な存在ではなく、
その思考や行動のかなりの部分は
いまだに動物的な本能に支配されている。

故に

社会のインフラや制度の設計には、
事故や不正を防止する為に
ヒトの本能を織り込むべきだ。

など。

同じ字から随分と毛色の違う教訓が出てきました。